高速鉄道シンポジウム

シンポジウムの様子

当社は、11月16日、当社の高速鉄道技術を紹介する「高速鉄道シンポジウム」を、名古屋マリオットアソシアホテルにおいて開催しました。このシンポジウムには、米国、英国、インド、マレーシア、インドネシア、エジプトの6カ国の在日大使館関係者をはじめ、米国の高速鉄道プロジェクト関係者、日本政府関係者、大学や企業の関係者など約170名の参加がありました。
シンポジウムでは、当社代表取締役会長 葛西 敬之からの挨拶につづき、東海道新幹線システムの国際版「N700-I Bullet」の紹介、当社が開発を進めている超電導リニア技術「SCMAGLEV」の紹介を行いました。
また、当日夜間には、N700系車両による最高速度330km/hの実証運転を米原~京都間で実施し、シンポジウムの参加者に試乗していただき、N700系車両が330km/hで運転可能な性能を持っていることを国内外に示しました。

シンポジウムの様子

開会挨拶 代表取締役会長 葛西 敬之

本日のシンポジウムにおいでくださいました駐日大使を初めとする各国大使館の方々、米国の高速鉄道プロジェクトに関わる方々、日本政府の方々にお礼を申し上げます。東海道新幹線と超電導磁気浮上式鉄道の研究開発・プロジェクトの推進をともにして頂いている大学の先生方、日本の主要企業の方々にも多数ご参加を頂き、ありがとうございます。
当社は、本シンポジウムを通じて、高速鉄道システムの海外展開を積極的に推進する決意を広く世界に発信したいと考えています。今後の海外展開の進め方につきましては、米国への展開をまず第一に実現し、さらには国際的に幅広く展開していくことを目指しており、今回のシンポジウムは、そのスタートラインとなる、重要な節目と認識しております。
今後、当社が海外展開を進めるにあたり、3つの点をアピールしていきたいと考えています。第一に、当社が保有している高速鉄道システム(東海道新幹線と超電導磁気浮上式鉄道)の先進性と優位性です。第二に、当社が世界で最も優れた高速鉄道の開発者(イノベーター)であり、また、トータルシステムの集成者(インテグレーター)であると同時に、鉄道事業の運営者(オペレーター)でもあるということです。この3つを兼ねている存在は、世界的に極めてユニークであると言え、この特徴を活かして、トータルシステム(全ての設備を保有し、運行管理し、保守するノウハウ)を海外に提案していきたい、と考えています。第三に、当社は具体的なトータルシステムとして、東海道新幹線の国際版「N700-I Bullet」と超電導磁気浮上式鉄道「SCMAGLEV」を用意しており、これらを海外に提案していくということです。
本シンポジウムでは、この「N700-I Bullet」と「SCMAGLEV」の紹介に加え、N700系車両による実証運転を通じ、現在の東海道新幹線システムが、330km/hの速度で運行できる能力を持っていることをお示ししたいと考えています。当社の保有する高速鉄道システムの本格的な海外展開にあたり、今後の関係者の方々の絶えざるご指導、ご支援をお願いしご挨拶とさせていただきます。

N700-I Bullet の紹介 専務取締役 総合技術本部長 森村 勉

当社は、東京~新大阪間において東海道新幹線を運行しており、開業以来45年にわたる安全・安定輸送の実績を持つ。東海道新幹線は、高速旅客専用線上で車両、軌道、電力・信号設備といった「ハードウェア」と安全推進体制や社員教育、保守、運行管理といった「ソフトウェア」からなる「鉄道システム」を一元管理し、最新鋭のN700系という極めて軽量な車両によって、高速走行性能かつ低エネルギー消費を実現した高速鉄道である。この東海道新幹線システムとN700系車両をトータルシステムとして海外向けに構成したものを「N700-I Bullet」と称し、海外における高速鉄道プロジェクトで採用されるよう積極的に提案しているところである。東海道新幹線においてN700系車両は16両編成で運行しているが、N700-Iという車両はヨーロッパの高速鉄道でもよく見られる編成長と同じ200m程度(8両編成)を標準として考えている。N700-Iは、輸送量に応じて編成長を自由に組み直すことが可能であり、電車方式を採っているためにいずれの場合でも基本的に性能は変わらない。さらに、軸重が軽量で、最高速度は330km/h、加速性能とエネルギー効率に優れた高性能車両である。
また、JR東海は2002年に小牧研究施設を開設し、高速鉄道のさらなるブラッシュアップのため技術開発を推進してきた。東海道新幹線の進歩を支える小牧の最新の研究開発は多岐にわたり、さらなる安全・安定輸送の確保、土木構造物の維持・強化、快適な乗り心地の追求、合理的なメンテナンス技術の追求などが挙げられる。なかでも、日本は地震に関する多くの経験を持つことから、既存構造物の強化や、脱線・逸脱防止対策など、地震対策で大きな成果を上げている。

SCMAGLEV の紹介 執行役員 東海道新幹線21世紀対策本部リニア開発本部長 白國 紀行

当社が東海道新幹線バイパスへの適用を目指して開発を進めている超電導リニアは、超電導現象を用いたリニアモーター方式による輸送システムである。
このシステムでは車両に非常に強力な超電導磁石を搭載することで、車両の軽量化が可能となる。また、車両(超電導磁石)と地上コイル間の強力な電磁力による吸引・反発で車両を推進・浮上・案内し、従来の鉄道のようにレールと車輪の粘着力に頼らないシステムとなっている。このように車両が軽量であり、粘着力によらないシステムであることから、高速・高加減速による輸送を実現することが可能で、また、ピーク時1時間片道当り約1万人の大量輸送性能も有することとなる。
超電導リニアの浮上・案内については、電磁誘導現象を利用することで、制御不要な電磁バネ系を構成していることから速度が高いほど車両は安定し、浮上走行時の空隙も10cm程度確保でき、地震時の安全性にも優れている。車両を軽量化すること等により省エネルギー性を実現し、東京~大阪間を移動する際の1人あたりのCO2排出量は航空機の1/3程度であるため地球環境保全にも優れている。また沿線環境の面でも、車内及び沿線の磁界は、世界保健機関(WHO)が各国政府に導入を勧め、既に欧州連合(EU)等で採用されている国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインに対して全く問題ないレベルである。沿線騒音についても、レールや架線等との摩擦音がないという利点があり、風きり音も適切な防音対策により十分な低減が可能である。
当社は今後、山梨実験線を延伸して設備を更新し、営業線に向けた実用技術の最終確認を行うとともに、東海道新幹線バイパスについて第一局面である2025年の首都圏~中京圏開業を目指して計画を推進していく。

330km/h 実証運転 米原~京都間

同日、米原~京都間の下り線において、N700系車両による最高速度330km/hの実証運転を行い、シンポジウム参加者に体験乗車していただきました。米原駅を23:40に発車、約8分後に最高速度330km/hに到達、海外からの参加者から「非常にスムーズで乗り心地が良かった」との評価もいただき、N700系車両が330km/hで運転可能な性能を持っていることを国内外に示しました。

N700系車両

最高速度330km/h