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コロナ禍という厳しい経営環境が続いていますが、今後も「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という当社の使命は不変です。安全で、良いサービスを効率的に提供し、より多くの方々にご利用いただくことで経営基盤を強化し、より力強い形で社会に貢献しながら、会社を発展させるべく、「ESG経営」を実践していきます。

明確な経営理念のもと、「ESG経営」の好循環を実現

昨今、「ESG経営」への要請が高まっていますが、これは事業活動を進める中で利益、キャッシュ・フローといった「経済的価値」と、持続的かつ豊かな社会を実現するという「社会的価値」を同時に創造しながら、企業を成長させていく経営のスタイルだと認識しています。こうした理解に照らすと、当社は「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念のもと、安全最優先の企業文化の確立や経営の健全性の確保を行いつつ、長期的な発展を目指し、全てのステークホルダーからの信頼を高めるという確固たるガバナンスにより、「経済的価値」と「社会的価値」を同時に創造し、「ESG経営」を実践してきたと言えます。
具体的には、日本の大動脈である東海道新幹線と東海地域の在来線について、安全を最優先に正確・快適な鉄道輸送サービスを徹底的に磨き上げるとともに、鉄道事業と相乗効果の高い関連事業を展開し、低コスト化と効率化にも取り組み、収益及び利益を着実に増やすことでキャッシュ・フローを確保して、「経済的価値」を不断に創造してきました。
特に東海道新幹線の輸送サービスの一段の向上を図った品川駅開業及び「のぞみ」中心ダイヤへの移行、そしてその後の「のぞみ」増発や最高速度285km/h化等を通じ、東海道新幹線のご利用は、品川駅が開業する前の2002年度からコロナ禍前の2018年度までの間、運輸収入ベースで38%伸びました。これは同期間のGDP(実質)成長率である14%を大きく上回る成長であり、その結果、当社の営業キャッシュ・フロー(連結)もこの間57%伸びています。
一方で、主力の東海道新幹線を軸とする事業活動において安全・正確・快適なサービスを追求することで、より暮らしやすい社会の実現、地域の発展に貢献するとともに、元来、環境性能の高い鉄道輸送のご利用を促進しつつ、また最新技術を取り入れながら環境優位性の向上を不断に図ってきました。こうした事業活動の成果は、安全かつ強靭なインフラの構築、イノベーションの推進、気候変動の影響軽減という形でSDGsの目指す「持続可能な開発」の達成につながっています。さらに、鉄道事業の運営を支える人材の育成に力を入れ、ジェンダー平等、働きがいのある雇用の促進という観点からも、SDGs達成につながる取組みを日々進めるなど、不断に「社会的価値」を創造してきました。
そして、先述の「経済的価値」であるキャッシュ・フローを原資に、さらに安全かつ強靭で環境優位性の高いインフラの整備とサービスの向上、それを支える人材育成とイノベーションの推進を進め、「社会的価値」を創造するとともに、より良いサービスを提供し、多くの方々にご利用いただくという好循環を実現してきました。現在進めている中央新幹線計画も、こうした好循環により実現可能となったわけです。

経営体力の再強化

昨年来続くコロナ禍の中で、当社グループは、経営面で大きなダメージを受けています。こうした中、当社は移動を必要とされる方々のために、感染拡大防止を図りながら輸送機関としての使命を果たしつつ、効率的な業務執行に努めていますが、ご利用の減少により利益が低下することで、経済的価値を生み出す力が一時的に損なわれており、この困難から立ち直るためには、相当な工夫と努力が必要だと考えています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により人と人との接触が大きく制約される状況は、ワクチン接種や治療薬の進展によって、やがて収束を迎えると思いますが、この間に進んだテレワークやWeb会議等の普及や旅行予約のネットへの大幅なシフト等の変化は、合理的なものについてはコロナ禍が収束した段階でも残るでしょう。コロナ禍は、こうした変化を加速させた面があります。当社は、この変化を受け止め、自らの力で今回の経営ダメージを回復し、将来にわたって社会的な使命を力強く果たしていくために、創意と工夫によってお客様のご利用を増加させることで「ESG経営」の好循環を再構築すべく、経営体力の再強化に挑戦していかなくてはなりません。
そのために、現在、今一度、自らの課題と向き合い、将来の仕事の進め方について、ICTをはじめ活用できる技術を総動員して、系統や部門間の垣根を越えて、より効率的に仕事を進める力を強化するための「業務改革」に取り組んでいます。また、その中で将来の労働力不足等、グループ全体として直面することになる課題を展望して、解決を先送りすることなく克服していかなくてはならないと考えています。
収益の面でも、お客様の動向やニーズをこれまで以上に丁寧に把握・分析し、新たな視点・柔軟な発想から収益の拡大に取り組んでいきます。例えば、2020年4月にお知らせした東海道新幹線と沿線のホテルのご利用を組み合わせたワーケーションプランのご提案はその一環です。また、コロナ禍で普及した「場所を選ばず仕事をする」スタイルに対応するために、「S Work車両」のように東海道新幹線の駅や車内のビジネス環境を整備する取組みについても進めているところです。さらに、新幹線とホテル、旅先の交通手段、観光プラン等、ご旅行全体をEXサービス会員限定サイトからシームレスに予約・決済できる「EX-Maas(仮称)」についても、2023年夏を目途にサービス開始すべく準備を進めています。加えて、グループ各社も、鉄道との相乗効果をアドバンテージとしながら収益を上げる力を高めるとともに、鉄道のご利用が減少しても、しっかりと収益を上げることができるように経営力を強化することが重要です。このため、当社と連携しながら、各社がそれぞれの課題に取り組んでいくことで、グループ全体としての発展を目指していきます。

日本の経済・社会のさらなる発展に資する成長戦略としての中央新幹線計画

当社は今後も安全・安定輸送を最優先に、日本の大動脈輸送の維持・発展という使命を果たしていかなければなりません。そのためにも現在取り組んでいる中央新幹線計画を強力に推進する必要があります。この計画は、開業から半世紀以上が経過した東海道新幹線の将来の経年劣化や大規模災害への抜本的な備えとして、民間企業である当社の自己負担で進めることを前提に、当社が開発してきた超電導リニアにより実現しようとするものです。これにより、当社は東海道新幹線と中央新幹線を一元的に経営することとなり、例えば東海道新幹線「のぞみ」をご利用のお客様が中央新幹線へシフトすることで「ひかり」、「こだま」の増発余地を生み出すなど、2つの高速鉄道を組み合わせてトータルとして最も望ましい輸送体系を構築していきたいと考えています。そして、このバイパス建設により経営リスクを低減させ、経営の安定化を図り、当社の使命を将来にわたり力強く果たし続けることが可能になると考えています。
また、中央新幹線の開業は、日本経済、さらには人々のライフスタイルに大きなインパクトを与えると考えています。政府においても「スーパー・メガリージョン」構想が提唱され、東京、名古屋、大阪の三大都市圏の一体化を実現することで、かつて東海道新幹線が開業した際と同じように、中央新幹線の開業が極めて大きい効果を生むとの期待が高まっています。中央新幹線の圧倒的な時間短縮効果により、例えば、人と人が会うことでイノベーションが生み出され、ビジネスチャンスが広がるなど、日本の経済社会に大きな便益と発展の可能性をもたらすでしょう。
さらに、ICTの発達等により社会が変容していく中で、中央新幹線の開業は、人々の生活において様々な可能性を広げる面もあると考えています。近年のICTの発達は目覚ましいものがありますが、ICTには、人と人とのつながりを加速・強化し、新たな移動需要を生み出す側面があります。加えて、テレワーク等の新しい働き方が浸透し、例えば自然が豊かな地域へ転居する人が出てくるというのも、前提には、必要な時には都心へすぐにアクセスできる鉄道等の交通サービスの存在があります。ICTと交通サービスは補完し合う関係にあり、中央新幹線の圧倒的な時間短縮効果は、人々のライフスタイルに多様な選択肢をもたらし、さらに豊かで持続可能な社会の実現に貢献できると考えています。
今後も早期の開業を目指して、工事の安全、環境の保全、地域との連携を大切にしつつ、十分にコストを精査し、健全経営と安定配当を堅持しながらこの中央新幹線計画を全力で進めていきます。

現状にとどまらず環境の優位性をさらに高める

地球環境保全についても、先に述べたように、当社の持続的な成長にとり重要な問題であるという認識のもと、不断に取り組んできました。鉄道は元来、他の輸送機関に比べてエネルギー効率が高く、地球環境への負荷が少ないという優位性があります。当社は、これまで、車両の省エネルギー化等、鉄道運行に係るエネルギー効率を一層高めることで、直接的な環境負荷の低減に努めてきました。加えて、現状に留まることなく、持続可能な社会の実現のために、政府による「2050年カーボンニュートラル」方針に沿って、より一層のCO2排出削減に取り組むとともに、2021年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。
当社が排出するCO2のうち、約95%は当社が購入する電気を発電する際に間接的に排出されるもので、残りの約5%が気動車等から直接排出しているものです。今後に向けては、まず当社が事業活動において直接排出している約5%部分について、内燃車両の電動化等を検討していきます。また、残りの間接的な排出については、発電部門全体の脱炭素化の動きに加え、当社としても車両や設備の省エネルギー化、再生可能エネルギーの活用の検討等、新しい技術の採用を通じてCO2の排出削減に積極的に取り組みます。さらに、循環型社会の実現のため、新幹線再生アルミのマテリアルリサイクルの促進をはじめ、限りある資源の有効活用を進めています。これらの取組みを、体制を整えて推進することで、環境の面から持続可能な社会の実現への貢献を引き続き進めます。

CO2削減の取組み

環境施策に関わる推進体制

これからも「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という使命を貫く

新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況が続いていますが、今後も、日本の大動脈を担う東海道新幹線の安全・正確・高速・高頻度・快適という特性を磨き上げること、そして東海道新幹線とネットワークをなす東海地域の在来線、さらには、関連事業を引き続き強化していくという当社グループの使命は決して揺らぐことはありません。
合わせて、この使命を将来においてさらに力強く実現するため、中央新幹線の建設を進めていきます。そのために、現在の難局を自らの力で乗り越えるべく常に「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念に立ち返り、これをより高いレベルで実現するために各部門における「安全に仕事を進める力」「より良いサービスを提供する力」「効率的に仕事をする力」という3つの力を不断に高めつつ、健全経営と安定配当を堅持し、株主様、お客様、従業員、取引先等を含むすべてのステークホルダーからの信頼を高め、持続的な成長を果たしていきたいと思っています。