事業戦略の考え方

当社は、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念のもと、鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先の経営課題としており、これを全ての事業展開の大前提としています。その上で、主力の東京・名古屋・大阪をつなぐ東海道新幹線の大動脈輸送の利便性に不断に磨きをかけて、より多くのお客様にご利用いただくことで収益の拡大を図る一方で、業務執行全般にわたり知恵を絞りつつ効率的な経営に取り組み、利益を確保し、それをベースにさらに安全の確保とサービスの強化のために投資するという好循環を実現しています。こうした取組みの積み重ねにより、経営基盤を大幅に強化することで、安定配当の継続や長期安定的な雇用環境の創出を行っています。また、社会の持続的な発展に貢献すると同時に、お客様、株主、従業員、取引先をはじめとした全てのステークホルダーからの信頼を高め、企業としての持続的な成長につなげていきます。

事業戦略とESG経営

当社は、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念のもと、鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先に、お客様に選択されるサービスの提供、業務効率化等に不断に取り組むことにより、日本の大動脈輸送を担う東海道新幹線と東海地域の在来線網を一体的に維持・発展させることに加え、大動脈輸送を二重系化する中央新幹線の建設により「三世代の鉄道」を運営することを使命としており、関連事業の展開も含め、これを長期にわたり安定的に果たし続けていくことを基本方針としています。
当社グループの中核をなす鉄道事業においては、長期間にわたる多額の設備投資や技術開発が不可欠です。このため、短期的な収益性のみを追求することよりも、長期的展望を持って事業運営を行うことが極めて重要と考えています。こうした考え方のもとで、当社は日々の鉄道運営において、より質の高いサービスを提供していくと同時に、経営基盤の強化を図りながら、中長期的なプロジェクトを計画的に推進しています。
また、鉄道事業を主力とする当社は、事業に磨きをかけることそのものがESGを重視した経営に直結していると考えています。鉄道は、他輸送機関に比べてエネルギー効率が高く、地球環境への負荷が少ないという優位性があるとともに【E】、安全・安定輸送の確保を大前提としつつ、大動脈輸送及び社会基盤としての地域輸送を支えること自体が日本経済と地域社会の持続可能な発展に貢献するものと考えています【S】。また、こうした企業活動を適正なガバナンスのもとで行うことにより【G】、安定的に利益を確保し、株主への還元や従業員・取引先との長期安定的な関係構築等を図るとともに、全てのステークホルダーからの信頼を高め、企業としての持続的な成長につなげることができると考えています。

【 S 】安全 Safety

安全が全ての土台

鉄道事業は、いつ、いかなる時であっても、安全・安定輸送の確保を最優先として取り組む必要があります。これまでの実績に関わらず、ひとたび大事故を起こせば、会社への信頼は一気に失われ、会社の存立すら危うくなります。こうした認識のもと、当社は会社発足当初から安全確保に向けハード・ソフト両面から最大のエネルギーを注いできました。毎年の設備投資の過半はこの安全に関わるものであり、会社発足以来、総額3.8兆円を超える安全関連投資を行っています。また、技術開発や社員教育においても、安全に重点を置いています。その結果、東海道新幹線は開業以来、乗車中のお客様が死傷される列車事故ゼロを継続しています。
安全への取組みに終わりはありません。当社の最大の経営課題は、これまでも、これからも安全・安定輸送の確保であり、その実現に向けて最大限の努力を弛みなく続けていきます。

【 S 】社会 Social

日本の大動脈を担う使命

東海道新幹線は、日本の三大都市圏であり、社会・文化の中心地でもある東京~名古屋~大阪を結ぶ大動脈として、1964年の開業以来、半世紀以上にわたって約66億人のお客様にご利用いただき、日本経済の成長を支えてきました。この地域は、面積で見ると日本の2割程度ですが、人口が集中し、GDPの6割以上を生み出している集積地帯です。その中で東海道新幹線は、ビジネス出張、レジャー、インバウンド需要等、多様なニーズを持ったお客様に対して、経済活動や社会生活における基本要素である移動サービスを提供する役割を果たしており、日本の経済・社会全体にとって必要不可欠なインフラとなっています。
この大動脈輸送を維持・発展させるという使命を果たすため、当社は一貫して輸送サービスの向上に努めてきました。安全かつ正確な点はもとより、高速、高頻度・大量、環境適合、快適といった特性に不断に磨きをかけるべく、長年にわたり継続的かつ有効に経営資源を投入してきました。これにより、東海道新幹線は開業以来、乗車中のお客様が死傷される列車事故ゼロ、平均遅延時分0.2分、最高速度285km/h、1日当たりの列車本数378本という結果を実現し、世界に比類のない都市間輸送マーケットにおいて他輸送機関に対し圧倒的なプレゼンスを示しています。
また、こうした取組みにより築き上げられた東海道新幹線の高い競争力により、2019年度における1日当たりの輸送人員は45.8万人にのぼり、当社単体収入の約9割を生み出し、そのキャッシュフローを原資として、さらなる成長に必要な設備投資や株主への配当等を可能としています。

社会基盤としての使命

当社は、名古屋・静岡を中心とした地域に根差した在来線運営とこれらの地域を中心とした関連事業展開を、日本の大動脈輸送と一体的に行い、人々の生活を支える、より広い意味では社会基盤としての使命も担っています。
当社が運営する12線区の在来線は、営業キロでは約1,400kmと東海道新幹線の約2.5倍の距離に相当し、通勤・通学をはじめとする日常生活の移動手段、つまり、地域の社会基盤としての役割を果たしています。当社は、こうした在来線を新幹線と組み合わせて補完し合うことで、ご利用いただきやすいサービスを提供し、輸送ネットワークの維持に努めてきました。今後とも、地域に愛される輸送サービスの提供に努めるとともに、引き続き知恵を絞り、収入の確保と効率的な業務運営を図っていきます。
また、将来にわたって安定した経営を維持し、さらに一層強固なものにしていくためには、収益基盤の拡大が必要です。鉄道をご利用になるお客様をはじめ、多くの方が集まる駅は、地域社会の重要な結節点であるだけでなく、当社にとっては重要な経営資源です。こうした経営資源を最大限活用し、駅の好立地におけるオフィス、商業、ホテル事業等の展開により、駅が賑わい、鉄道のご利用の拡大につながる一方で、輸送サービスの改善によって鉄道利用が増加すれば、駅で展開する当社の関連事業の売上増加にも寄与することになります。当社最大の駅である名古屋駅におけるJRセントラルタワーズやJRゲートタワーはその代表例です。こうした好循環を生み出す関連事業について、グループ会社と一体となり、鉄道との相乗効果が期待できる分野を中心に事業収益及び利益の拡大を図っています。

【 E 】環境 Environment

地球環境に対する責任

鉄道には他の輸送機関に比べてエネルギー効率が高く、地球環境への負荷が少ないという優位性があります。当社は、車両の省エネルギー化等、鉄道運行に係るエネルギー効率を一層高めることで、直接的な環境負荷を低減しています。
具体的には、新幹線の一層の省エネルギー化を図るため、省エネ型車両の開発・投入を積極的に行っています。東京~新大阪間を最高速度285km/hで走行した場合のN700Aタイプの電力消費量は、最高速度270km/hで走行した場合の従前の700系に対して16%の削減となり、速度向上を実現しつつ、顕著なエネルギー消費の改善を達成しています。その結果、2019年度末の段階で東海道新幹線のエネルギー消費原単位は、1990年度比で約33%改善されています。また2020年7月に営業運転を開始したN700Sでは、さらに6%電力消費量を削減しました。この他、在来線における省エネ型車両の投入や、新幹線で電力供給効率を向上する取組み等も行っています。
加えて、地球環境への負荷が少ない鉄道を一人でも多くのお客様に選択・利用していただくことで、運輸部門全体としての環境負荷が抑制され、地球環境保全につながると考えています。鉄道は国内全体の旅客輸送量のうち30%を担っているにも関わらず、CO􀀀排出量では7%を占めるにすぎません。東海道新幹線(N700系「のぞみ」)と航空機(B777-200)を比較した場合、東京~大阪間を移動する際の1座席あたりのエネルギー消費量は約8分の1、CO􀀀排出量では約12分の1です。企業の責任として地球環境保全に貢献しながら、今後も輸送サービスの向上に不断に取り組んでいきます。

【 G 】企業統治 Governance

確固たるガバナンスに基づく経営

当社の経営の柱となる鉄道事業においては、安全・安定輸送の確保が最も重要な課題であり、例えば、新幹線の大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策等、鉄道を長期にわたり安定的に運行していくために必要な取組みを着実に実行するという考え方で経営を行っています。また、中央新幹線という大規模で長期的な事業に取り組んでおり、これにより当社の経営リスクをさらに低減させ、経営の安定化を図るとともに、株主をはじめとした全てのステークホルダーの利益を確保することとしています。このように、当社が営む鉄道事業においては、長期間にわたる多額の設備投資や技術開発が不可欠であるため、短期的な収益性を追求することよりも、長期的な展望を持って事業運営を行うことが極めて重要と考えています。
当社は、引き続き安全最優先の企業文化の確立や経営の健全性・効率性及び透明性の確保を図りつつ、企業としての長期的な発展を目指すことで、全てのステークホルダーからの信頼を高めるという確固たるガバナンスのもと、事業活動に取り組んでいきます。

SDGsへの取組み

当社は、自らが果たすべき役割と社会的使命を、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念として定めています。日本経済や国民生活を支える重要なインフラ企業として、将来にわたってその誇りと使命感を常に持ち、この経営理念をより高いレベルで実現していくことこそが、当社の企業としての持続的な成長のみならず、SDGsが目指す「持続可能な社会」の実現につながると考えています。
SDGsに掲げられた17の目標について、当社が事業活動により創出する価値を通じて特に貢献できる項目として、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「11.住み続けられるまちづくりを」「13.気候変動に具体的な対策を」のほか、「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」等の実現に力を注いでいきます。

ステークホルダーとの関係

当社が営む鉄道事業は公共性が高く、お客様、株主、従業員、取引先、地域社会等、多面的なステークホルダーが存在することから、こうした利害関係者の一つにのみ偏重するような経営を行うのではなく、全体の関係性をバランスよく保つことが重要であると考えています。多くのご利用者の利便性等を向上させ、地域あるいは日本の経済・社会の発展に貢献するとともに、安定的に利益を確保して、株主への還元や従業員・取引先との長期安定的な関係構築等を図っていくことで、全てのステークホルダーからの信頼を高めることができ、企業としての持続的な成長につながると考えています。今後とも、こうした多面的なステークホルダーの方々のバランスをよく考え、長期的な視点に立って経営を行っていきます。